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長谷山博之のシネコンサートが待ち遠しい! 《 交響曲第7番イ長調作品92 》
2021.02.03
「英雄」「運命」「田園」の表題付きの交響曲に交じって高い人気があるのがマニアの間では「ベトシチ(7)」と言われている交響曲第7番である。10年以上も前のTVドラマ「のだめカンタービレ」で用いられ更に人気が高まった。松本零士の「不滅のアレグレット」ではドイツ敗戦後のフルトヴェングラーの姿を描いている。他の交響曲にも増して、躍動し、突き進むような曲想は多くの人の心を掴んだ。この曲が生まれた1812年はナポレオンがロシアで大敗を喫した年である。この事は後に大砲を使うチャイコフスキーの大序曲「1812年」を生むことになるが、ベートーヴェンはこの「ベトシチ」の初演時に共に演奏したビトリアの戦いを題材にした「ウェリントンの勝利」ではライフルを効果的に使っていた事もあり、「ベトシチ」を凌ぐ凄い人気があったというが、今ではほとんど演奏されず人気は「ベトシチ」の足元にも及ばない。
これまでのバーンスタインの指揮を観ていると期待は自ずと膨らむ。「運命」の第4楽章の感動の再来をこの「ベトシチ」に期待するのは至極当然な気持ちになるのは私だけではあるまい。
第1楽章は弦楽器の音に続きオーボエの音で始まる。大スペクタル映画の予告編のようである。力強く、しかし自然に力むことなくオーケストラのポテンシャルを存分に引き出すような指揮で始まる。観ていてどんどん音楽に引き込まれていく反面、バーンスタインは極めて冷静に曲を進めている。策士である
。 第2楽章を称して「不滅のアレグレット」とはワーグナーが言ったことであるが、正に他に類を見る事の出来ない楽章である。自然に呼吸するように始まり徐々に高揚するかのようなテンポで音楽は進む。オーケストラというより音楽を完全にコントロールするかのような指揮である。音楽がどんどん厚くなっていく様の抑揚感は心地よい緊張感さえ生まれる。反復する旋律が表情を変えこれでもかと現れる。巨匠ならでは、である。
第3楽章は打って変わって速いテンポの音楽がこれでもかこれでもかと目の前に現れる。会場のお客様がどんどん引き込まれていくのが画面から伝わってくる。お客様を引き込ませてバーンスタインは「ベトシチ」というドラマをこれでもかと言うように進めていく。楽章中過ぎから現れる金管楽器が弦楽器と共に鳴り響く様は〝見事〟である。
第4楽章は、熱く躍動的で熱狂的な拍手で賛美したくなるにふさわしい見事な終楽章である。これでもかと繰り返されるティンパニの扱い方は現代のドラム奏者の姿をだぶらせてしまう位モダンである。当時の人はさぞかし驚いたであろう。ウィーンフィルは何度も何度も演奏した事のあるこの曲にバーンスタインはあの手この手で自分の表情を織り込んでくる。切り揃えるかのようにフレーズの区切りを示し、楽章を高揚させフィナーレへと進む、指揮を振るというより指揮を執るというのが的確である。心地よい疲労感と緊張感が聴く側にも伝わってくる。

photo(c)Unitel

長谷山博之 ☞
 
公益財団法人仙台フィルハーモニー管弦楽団事務局勤務。
「仙台発 大人の情報誌 りらく」連載「音楽(ねらく)物語」(現在休載中)で健筆を振るうなど
クラシック音楽の伝道師としても活動。
美酒と美食と音楽そしてこの世のすべてのものを愛する、まるでバーンスタインみたいな博愛主義者。(笑)