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長谷山博之のシネコンサートが待ち遠しい!《交響曲第4番変ロ長調 作品60》
2021.01.27
逃しがたい名曲
  「優れた人間の大きな特徴は不幸で苦しい時にじっと耐えうることである。L.v.ベートーヴェン。」これは私が青春時代、労働争議の真っただ中にあった日本フィルハーモニー交響楽団の練習場であった今は亡きフジテレビの凱旋門ビル内の書記局に紙に書かれ貼られていた生涯に最も印象に残る名言であった。ベートーヴェンの言葉通り日本フィルはオーケストラの灯を消すことなく現在に至っている。ベートーヴェンは自らにこの言葉を投げかけたのだろう。ハイリゲンシュタットの遺書を書いてから4年がたつが相変わらず難聴に悩み続けていた。完成したのは1806年頃。相変わらずヨーロッパは激動であった。この初演は貴族の私邸、その事もあったのだろうか、最も小さな編成の交響曲である。「英雄」の成功と「運命」の高まる評価の中でそれほど頻繁に演奏はされてはいないが逃しがたい名曲と言いきっても構わないだろう。
第1楽章は、バーンスタインは穏やかな旋律を愛でるかのように指揮しはじめる。やがて音楽は軽快な表情に変わる。その変わり際のバーンスタインの表情は一瞬であるが必見である。力む様子等寸分も見せずに強音、弱音の変化を自然に行き来していくのは興味深い。
 第2楽章は穏やかに始まる。過度に歌い込みたくなるところを抑えた好演奏。それでいながら曲の表情は豊かである。しかしベートーヴェンはティンパニが好きなんだなぁとつくづく思ってしまう。
 第3楽章は雰囲気ががらりと変わって始まる。木管楽器群の奏でる牧歌的な雰囲気はベートーヴェンならではなのか失われた現代の何かを思い起こさせるような気さえする。最後のホルンパートの音色からは絶品。
第4楽章は全体的に弦楽器群の速いパッセージが支配する。ベートーヴェンの重き音色と軽やかな音色の同居はウィーンフィルならではだろう。なんの苦も無く進んでいるかのように見え音楽の流れを完全にバーンスタインはコントロールしている。ベートーヴェンの9曲の交響曲の中でついつい忘れがちな1曲を見事な名曲に仕上げている。〝魔法使い〟と云う言葉があるが、〝オーケストラ使い〟と云う存在があるなら正にバーンスタインに相応しいだろう。

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長谷山博之
公益財団法人仙台フィルハーモニー管弦楽団事務局
勤務。
「仙台発 大人の情報誌 りらく」連載「音楽
(ねらく)物語」(現在休載中)で健筆を振るうなど
クラシック音楽の伝道師としても活動。
美酒と美食
と音楽そしてこの世のすべてのものを愛する、まる
でバーンスタインみたいな博愛主義者。(笑)